日本数理生物学会が授与する賞には、大久保賞(Akira Okubo Prize)、研究奨励賞、大会ポスター賞の3賞があります。大久保賞はSociety for Mathematical Biology (SMB)と共同で授与します。

Rules of Akira Okubo Prize

大久保賞(Akira Okubo Prize)

日本数理生物学会(JSMB)は, Society for Mathematical Biology (SMB)と共同して, 2年に1度数理生物学の発展に貢献した研究者に大久保賞を授与しています。大久保賞は「若手」研究者と「年長」研究者に交互に授与されています。

大久保賞の過去の受賞者

2015 Akira-Okubo Prizeの受賞者が決定2015年2月18日

日本数理生物学会と Society for Mathematical Biology とが共同で設立した数理生物学の賞に、Akira-Okubo prize があります。2015年の賞は、ペンシル バニア大学の Joshua Plotkin 教授に与えられることになりました。

この賞は、長年アメリカの大学で教鞭をとられ、生態学における拡散過程の研究で先駆的業績を上げられた大久保明先生を記念して設立されたものです。その受賞者は、次のように規定されています。「優れた革新的な理論的研究によって、困難な理論的課題を解決したり、傑出した概念を確立したり、理論とデー タを融合することで生物学を進めた研究者」つまり日本数理生物学会で発表されているすべての分野をカバーするものといえます。

受賞者の選考は、2年に1度行われます。原則として40歳以下の「若手研究者」を対象とした賞と、年齢制限なしに評価する賞が交互に選ばれます。ちなみに 今回の選考は若手研究者を対象とした賞でした。過去の受賞者の顔ぶれは、若手対象の賞が、Martin Nowak, Jonathan Sheratt, Fugo Takasu, Michio Kondoh, そして今回の Jonathan Plotkin です。それに対して年齢制限のない、生涯の達成を対象とする賞が、Simon Levin, James Murray, Hans Othmer, Nanako Shigesada です。昨年の大阪でのJSMB/SMB合同大会において、重定南奈子先生が受賞講演をされました。

Joshua Plotkin は、もともとプリンストン大学の Simon Levin の大学院生で、当時高等研究所にいた Martin Nowak とも共同研究をすすめました。感染症動態 やマレーシア熱帯林での樹木の空間分布の論文もあり、他方で癌や言語進化の論文も書いています。しかし、その後はずっと配列データの解析から進化プロセスを知ることに集中して理論的な研究をすすめ、コドン使用バイアスの解析などで良い成果を挙げました。またインフルエンザウイルスの配列データの解析から適応度地形を読み取る手法を開発しました。いまはペンシルバニア大学の生物学科とコンピュータ/情報科学科の教授をしています。

賞の選考は、2つの学会からそれぞれ3名ずつ選出された計6名で行われます。今回の選考の委員は、Jonathen Sharrett(長), Michael Neubert, Hans Othmer; 日本数理生物学会が Yoh Iwasa, Michio Kondoh, Yasuhiro Takeuchiでした。

実は今回8名の候補者がすべて SMB の会員で、残念ながら日本数理生物学会からは候補者がいませんでした。私が驚いたのは、年齢が若いわりに、すべての候 補者が非常に多数の論文を書いていることです。たとえば Joshua Plotkin は Nature や Science などに掲載したものを含めて90編を超える数の論文を書いて います。母国語が英語だから論文が書きやすいのだというのも本当でしょう。もちろん選考では、論文の被引用数や h-指数、ジャーナルの impact factor などだけで決めるようなことはなく、各候補がどのようなオリジナルなアイデアを出して、どのように困難な問題を解決したかということに注目します。し かし、全体としてその勢いには見習うものがありました。日本数理生物学会の若手・中堅の人達は、同世代のかれらに肩を並べて数理生物学や理論生物学の 良い研究を進めて行ってほしいと思います。

大久保賞選考委員(日本側代表)巌佐 庸

日本数理生物学会研究奨励賞

日本数理生物学会(JSMB) は,数理生物学に貢献をしている本学会の若手会員の優れた研究に対して,研究奨励賞を授与しております.

第11回研究奨励賞の受賞者が決定2016年9月8日

受賞者
審査委員会の報告

選考委員会は、本年度の研究奨励賞を以下の2名の方に授与することに決定いたしました。

國谷紀良 氏
(神戸大学大学院システム情報学研究科)
江島啓介 氏
(アラバマ大学バーミンガム校)

今年度は5名の候補者がありました。応募時点の職については、国内外のポスドク、任期付きの職、常勤の職と多様でした。学位取得後の年数は、2年から11年でした。

第一段審査として、各候補に関する資料を選考委員6名に送って検討していただいた後、投票および議論を行い、第二段審査のために3名の候補者に絞りました。

第二段審査においては、3名の候補者をさらに2名に絞りました。その後最終的に残された2名の候補者それぞれについて、研究奨励賞の受賞に値するかどうかの議論を行い、最終的に上記2名の方に研究奨励賞を授与することに決定しました。

今回は各候補者ともに優秀で非常に拮抗しており、各段階の審査に時間がかかりました。なお、今年度から会則、細則が変更されており、研究奨励賞の授与対象が「中堅または若手会員」から「若手会員」のみに変更されたこともあり、第一段審査の過程で「若手」の定義についても議論を行いました。

國谷紀良氏は,2013年に東京大学大学院数理科学研究科数理科学専攻において学位取得後、2014年4月から神戸大学大学院システム情報学研究科に講師として勤めています。國谷氏の研究は、集団における感染症の流行ダイナミクスを記述する微分方程式の定性解析をテーマとしています。特に、構造化された方程式において基本再生産数が閾値となるかどうかについての解析を重点に置いています。また、理論的な問題についてアイデア豊富であり深く研究していることに加えて、感染の季節性などの現実的な要素も重視しています。多くの研究者との共同研究に加え、近年は、イタリア、中国などの海外の研究者との交流を活発に行なっています。応用数学の観点からの数理生物学へのますますの寄与が期待されます。

江島啓介氏は、2014年に東京大学大学院情報理工学系研究科数理情報学専攻において学位を取得後、その後東京大学大学院医学系研究科国際医学講座ポスドクを経て、2014年9月よりアラバマ大学バーミンガム校にポスドクとして滞在しています。江島氏の研究は、数理モデルを活用した感染症データや肥満症データの分析です。特に近年は、これまでにない肥満症の世代間伝播モデルの研究に重点を置いています。江島氏の研究の特徴は、データ生成過程に着目した数理モデルの定式化を行うこと、および観察データにモデルを適合することで、統計学的推定を通じてもモデルの妥当性を検証することです。これらを通じて、今後感染症疫学の分野に新しい視点を切り開いていくことが期待されています。海外でのポスドクとして国際的に活動していることも特筆すべき点です。

国際的に活躍している優秀な若手研究者であるお二人の受賞が,後進の若手研究者への激励となることを期待します。また,バックグラウンドが大きく異なるお二人の受賞は,学際的な特徴を持つ学会である日本数理生物学会における研究のさらなる広がりを期待させるものでもあります。

以上より、國谷紀良氏と江島啓介氏の両氏は、会則における「数理生物学に貢献をしている本学会の若手会員の優れた研究を表彰することにより,研究の発展を奨励しわが国の数理生物学の一層の活性化をはかる」という受賞基準に十二分に値する研究者であることにより、ここに両氏を日本数理生物学会研究奨励賞の受賞者として推薦いたします。

なお、途中でも書きましたが今回は応募者のレベルが高く、今回選に漏れた方も決して引け目を感じることなく、再度応募していただければと思います。

日本数理生物学会
研究奨励賞選考委員会

研究奨励賞の過去の受賞者

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