会長挨拶

年頭のご挨拶

2008年1月
日本数理生物学会会長  重定南奈子

会長に就任して1年が過ぎました.昨年の学会としての最大のイベントはSociety for Mathematical Biologyとの合同大会を米国San Joseで開催したことでした.一方で,学会が後援する国内の会議も盛況でした. JSMBニュースレターNo.54には,夏以降に開催された,数理解析研集会第4回「生物数学の理論とその応用」(代表者梶原毅)と,「新しい数理生物学の研究プロジェクト2007」(代表者瀬野裕美)の報告が載っています.前者は生物数学の理論に加えて、社会、環境、医学などへの応用や最新のトピックスが多彩にくみこまれた企画であったこともあり、本集会が始まって以来最大の参加者を得てSan Jose大会を補完する有意義な集会となりました.また、後者は,若手参加者が,特別講師の話題提供を受けて,自ら問題提起をし共同研究を行うという大変ユニークなプログラムが組まれていました.生命現象の数理モデルに興味を持ちつつも,実際に踏み込んでやってみるきっかけがない若手研究者は潜在的にまだまだ多いと思われます.今後も数理生物学をより身近に理解・体験してもらえるよう様々な試みがなされることを期待しています.

さて,半ば私事になりますが,昨年9月 24-28日にイタリアのナポリ近郊で開催された BIOCOMP2007(Topics on Competition and Cooperation in the Biosciences,主催者Luigi Ricciardi)に出席いたしました.実はこの会議は"Dedicated to the Memory of Professor Ei Teramoto(1925-1996)"と銘打って,本学会の創立者の一人である故寺本英教授の没10周年を記念して開催されたものでした.多くの欧米の研究者が,日本で数理生物学を立ち上げられた寺本先生の事を今なお鮮明に覚えておられ,その業績を偲んで下さったことを学会長として大変光栄に感じるとともに,主催者の方々に心より感謝した次第です.

若い会員の皆様には寺本先生を直接ご存じない方も多いと思いますが,先生は数理生物学分野の若手研究者が将来国際舞台で活躍できるようにと様々な形で国際交流を推進された方でした.ニュースレターNo.53と No.54には,「新しい研究者の芽を育む会」(略称:育む会)よりSan Jose合同大会渡航支援をうけた方々の報告が載っていますが,本基金は先生が1987年に設立されたものです.ご承知のように,学会の年会費はだれでも気軽に入会できるようにと,設立当時からの3000円を堅持してきました.この間,物価の高騰と相まって経費は嵩む一方で,一時財政的に逼迫した時期もありましたが,学会化を契機にニュースレターのスリム化など様々な改革が行われ現在は何とか健全財政を保っている状況です.そんな中で,若手支援はとうてい無理とあきらめていた矢先,育む会からSan Jose合同大会の若手参加者に今回は大型の渡航援助をする旨のお申し出をいただきました.これも寺本先生が残された若手への贈り物であり,先生の長期的な視野と学会への期待に改めて思いを致した次第です.なお、育む会は引き続き本年度も若手研究者の海外渡航援助を実施しています.若い世代から文字通り新しい研究の芽が育つことを心より期待しています.   最後に,今年度開催の年大会および学会後援会議等の予定を下に掲げておきます.詳細は、ホームページをご覧下さい.

その他,会員の皆様が独自に企画される集会やシンポジウムなどがありましたら,学会ホームページ, ニュースレターやメーリングリストBiomathなどを利用して会員に広報して頂ければ幸いです。

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