山村則男

会長挨拶

会長就任のご挨拶

 本年1月より2年間,会長をつとめることになりました総合地球環境学研究所の山村則男です.事務局も静岡から関西に移動し,幹事長は京都大学の山内淳さん,会計は大阪府立大学の江副さん,会員担当は龍谷大学の加藤聡史さんにお願いしました.事務局メンバーと相談しながら,これから2年間,学会のお世話をしていきたいと思いますので,よろしくお願い致します.

 はじめに,竹内康博前会長と佐藤一憲前幹事長を中心とする前執行部の皆様には,この2年間,学会運営にご尽力をいただきありがとうございました.また,昨年の北海道大学で開催された年大会は多くの参加者があり,盛大に成功したと思います.私としては,とくに札幌ビール園で行われた懇親会でのおいしいビールの味が印象に残っています.本大会にご尽力頂いた高田壮則大会委員長をはじめ大会実行委員の皆様に心より感謝致します.

 今年の年大会は,9月13日から15日まで,明治大学の駿河台キャンパスで開催される予定で,三村昌泰さんや若野友一朗さんなど東京地区の会員の方々が準備を進められていると聞いています.懇親会場予定のリバティタワーの23階に行ったことがありますが,とても眺めがよくきれいなところですので,会員の皆様方は是非参加されるといいと思います.2012年の年大会は,岡山大学でお世話していただくことになっています.今年,来年と年大会をお世話していただける方々に感謝しています.

 広島大学の瀬野裕美さんを編集責任者として,日本数理生物学会設立20 周年記念事業としての「シリーズ数理生物学要論」の3巻も昨年までに出版が完了し,財政状況も含めて,今年度は学会の懸案事項のような大きな課題はないと運営委員の方から聞いています.これは,これまでの学会の歴代会長をはじめとして,学会の改善・発展に努力をされてきた方々のおかげであり,たいへんありがたいことだと考えています.

 今期の私の任務は,こうした歴代執行部が築いてこられた路線を基本に据えて,数理生物学のさらなる発展と普及の為に,少なくともマイナスの成長にならないように,努力していくことだと考えています.これまで私は,ニュースレター編集や学会の準備のお世話などをしてきたものの,数理生物学会の中枢の運営には大きくは関わってきませんでした.そのようなものが会長に選ばれ,恐縮すると同時に,何も分かっていないので不安にも感じています.運営委員や事務局の皆様,一般会員の皆様に教えてもらいながら職務を全うする覚悟ですので,よろしくおねがいたします.

 学会主催の年会以外に,本学会は様々な研究集会を後援しています.毎年数理解析研究所で行われる「生物数学の理論とその応用」研究集会や「生物現象に対するモデリングの数理」,関係者による国際研究集会など数多くの研究交流の活動を学会としては支援していきたいと考えております.「生物現象に対するモデリングの数理」研究集会には,講師や研究発表の審査員として,何度か参加させていただきましたが,学生がグループごとに研究課題を設定し,研究内容を構成し,発表する形式は,研究者としての初期段階のトレーニングとして非常に有効であると思いました.会員の皆様方には,学部学生や修士学生などに参加を勧められることを,この場を借りてお願いいたします.

 本学会は,国際的にも,The Society for Mathematical Biology(SMB),European Society for Mathematical and Theoretical Biology (ESMTB),Chinese Society for Mathematical Biology(CSMB),Korean Society for Mathematical Biology(KSMB)と交流があり,日本数理生物学会のホームページにもリンクされています.とくに,中国,韓国とは地域的にも近いので積極的に交流を深めていきたいと考えています.

 日本数理生物学会が授与する賞には,大久保賞(Akira Okubo Prize),研究奨励賞,大会ポスター賞の3賞があります.大久保賞は2年ごとに,SMBと共同で授与します.分野は幅広く数理生物学全般で,また対象も両学会の会員には限られていませんが,過去6回のうち日本人研究者の受賞が1回だけとなっています.今年は授賞の年ですので,日本側から優秀な候補者を積極的に推薦していただきたいと思います.研究奨励賞,大会ポスター賞は,若手の励みとなり,数理生物学以外の他分野との競争という意味でも実効性がありますので,ぜひ続けていきたいと考えています.

 日本数理生物学会は,1989年に発足した「日本数理生物学懇談会」を2003年に学会組織として改編したもので,懇談会時代を含めて,20年余の歴史があります.この間,数理生物学は大きな発展を遂げ,今や,他の学問分野からも一目置かれる存在になっていると思います.しかし,すでに1989年のニュースレター第1号で,日本における数理生物学の創設者の一人である寺本英さんは,「20年前から始めた研究がいささか陽のあたる研究に成長してきた」と述べていますが,一方,「数理生物学が今や独自の分野となり,しかも競争排除の政策を遂行しているということになりかねない」ことも危惧しています.我々は,他の分野の最近の研究動向にも注意を払いながら,数理生物学の現在の分野や手法に必ずしもこだわらず,常に新しい展開を模索していくことも重要だと考えています.

2011年1月
日本数理生物学会会長 山村則男

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